白球にエールを乗せて

 

[DCKS-0112] DJメジロマックイーン - URBAN SUMMER



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東京都世田谷区。
気温37度。天候は晴れ。
39度のとろけそうな日ではなくとも茹だるような暑さとは反転、空調の効いた涼しい部屋で起床する。

時計は短針と長針が縦に一本並んでいる。メジロの朝は早い。

まずは洗面所へ行き、口をゆすいで顔を洗う。
清潔なタオルで水気を拭き取り、洗濯カゴへ折りたたんだタオルを入れる。

着替えを済ませてリビングへ移動すると、使用人が朝食を用意してくれていた。
本日のメニューは低温調理した鶏胸肉のザジキソースと、バルサミコ酢をベースにしたドレッシングで整えたサラダ。付け合わせはトリュフベーカリー製、白トリュフの塩パンだ。

本日は土曜日。トレセン学園チームサティバはお休みである。
普段よりも気が抜けた面持ちで、DJメジロマックイーンは休日の過ごし方を考えていた。途中、折角の食事を漫然と口に運んでいる事に気がつき、しっかり味わって食べるよう意識する。

食事を終えると、使用人へ声をかける。
「本日は自由きままに出かけてまいります。おそらくいつもより遅くなると思われますので、家事を終えましたら帰宅して構いませんわ」

使用人は表情を変えず、ただ礼をもって返答とする。
そして、DJメジロマックイーンは外へと歩を進めた。

「久しぶりに自転車に乗りましたが、これはこれでいいものですわね」
ウマ娘としては走る方が早いのだろうが、本日は休養日。体への負担を減らすためにもクロスバイクに乗り、まずは公園にやってきた。
人はまだほとんどおらず、ベンチに座ってじっとしていると、水の音が聞こえてくる。

この公園、小さな川を模した水場があるのだが、朝方は水の噴出口から泡が多く出ており、まるで水中にいるような気持ちにさせてくれる。
そんなひと時が好きで、よくここで朝を過ごす。
鳥の鳴き声も相まって安らかな時を迎える。まるで室内楽を聴いているかのような陶酔感で目を瞑っていると、日々の疲れが飛んでいくような気さえする。
そんなひと時を終え、また改めてクロスバイクに乗る。
しばらく走って三宿の交差点を右へ曲がり、そのまま渋谷へ向かう。朝の246号線はわりと静かで、普段の喧騒と比較すると別世界のように感じる。

坂道を登り切り、神泉交差点を真っ直ぐ通過してそのまま南平台からの坂を降りる。
フクラス横の自転車駐輪場へクロスバイクを格納したら、そのままスターバックスへ入る。

甘いメニューは意識的に見ないようにして、ストイックな注文を心がける。
「ブリュードコーヒーのアイスをベンティでお願いいたしますわ」

店員へ注文をすると、すぐに対応をしてくれる。
「本日はイタリアンローストとなっております」

目の前に置かれたコーヒーを手に取り、お店を出ながら一口飲み込む。
芳しい香りとまろやかな苦味と旨味。たまらない。

そのまま街中を散策するため、まずは京王井の頭線の西口改札前を通過して道玄坂を登る。
時刻は10時。朝よりも日差しが強くなってきたので、サングラスをかける。

登り切ったらそのまま交差点を渡り、円山町を通過したらお目当てのホビーショップに到着した。
新作の「メジロマックイーン [かっとばせー!ですわ!?]Ver. 1/7スケールフィギュア」を見に来たのだが、すでに並びが出来てしまっていた。

「まったく、転売だなんて非効率な事をせず真面目に働いてお金を稼いだ方が良いでしょうに…魂を穢す、愚かな行為ですわ」

DJメジロマックイーンは転売屋を心底下に見ている。
むしろ軽蔑と言ってもいいだろう。
全員ほどなく死んで欲しいとまで思っている。

「あれ、メジマクさんじゃないっすか。おつかれっす」

居酒屋前でメニューを口ずさむ向井秀徳が如くブツブツ言いながら列に並んでいると、後ろから声をかけられた。

「まぁ、pencilさん!」

そこには、いつもカスい曲でもリリースさせてくれる優しいレーベルことDochakuso Recordsのオーナー、pencil氏がいた。

「pencilさんもメジロマックイーンのフィギュアを購入しに?」

「いや、俺は対魔忍の新作フィギュアを買いに来ました」

「そうでしたか。早く買って帰ってシコってくださいまし」

「うすw」

そんな軽々しい会話をしながらお店の開店を待つ二人。
pencil氏は初音ミクのアイコンで知られているが、中身はもちろん初音ミクみたいな美少女ではなく音楽が得意なおじさんだ。
DJメジロマックイーンも同じようなものだが、読者の精神面を考慮すればそのままウマ娘のメジロマックイーンと初音ミクが会話している絵面で想像してた方が健康的だろう。

そんなこんなで気づけばお店が開店した。

pencil氏は転売屋のカスどもとは違う商品を購入しに来ているので列を横目に先に店舗へ入るかと思いきや、そちらの商品にも転売屋が並んでいたようで、新たに生まれた別の列に並ばされる。

しかし、そんな対応にも嫌な顔一つせず彼は並ぶ。
鍛え上げてきた精神力が違うのだ。

コンスタントに排便
カジュアルに自慰
日々の生活
継続は力

彼のsoundcloudのbioにあるこのメッセージは、伊達ではない。

そんな彼を尊敬の眼差しで送り出しながら、DJメジロマックイーンは目の前に並ぶ転売屋に聞こえる大きさで何度も舌打ちをする。チクチク攻撃をせずにはいられないのだ。

そこから1時間ほど経ち、もれなく二人とも目当てのアイテムを購入できた。

「いやぁ〜、さすがにあれは無いっすわw」

「本当、転売屋はみんな死ねばいいのですわ」

「まぁまぁ…w」

「ちょうどお昼時ですし、一緒にお昼ご飯はいかがですか?」

「あぁ、いいっすねぇ〜」

時刻は昼の13時。太陽も登り切り、外は暴力的なまでの日差しが照り返している。
とりあえずコンビニに入り、二人とも特保のコーラを購入する。肥満気味であるのにコーラを手放せない哀れな羊達として満点のチョイスだ。

空調が効いた店内ではなく、あえて外でキンキンに冷えた特保コーラを飲む。夏だけに許された特権だ。
飲み歩きながら、露店のケバブ屋でケバブサンドを注文する。間違いなくトルコ人ではなくカレー事業の飽和で転身したネパール人だろというツッコミを心の中でしながら、出来上がりを待つ二人。

「ネパールサンド美味ぇ〜!wですわ」

「ちょw それ口に出すのアカンっすわw」

そんな悪ノリをしつつ、ケバブを特保コーラで流し込む。街頭では信号の音と擦り切れるほど使い回されたメロディ展開のR&Bが聞こえてくる。

こんな何ともない時間が幸せなんだろうか、そう思いながら食事を終えた。

「ちなみに、この後クラブでデイのDJ出演あるんすけどメジマクさんも来ます?」

「いいですわね。遊びに行きますわ」

二つ返事で了承し、そのままクラブへ移動する。
場所の名前は控えるが、なんか入口からは想像できない程度には広いところだ。

エントランスで入場料を払って中へ入ると、でっかくて速い音が鳴り響いている。
そのままの足でバーカウンターへ行きアルコールを注文する。肥満気味なのでもちろん糖質ゼロのハイボールだ。

「ゴクッ…ゴクッ…ッカァ〜ッッ!!!ですわ」

「いやぁ〜、いい飲みっぷりっすねw」

「外が暑すぎてハイボールが3倍増しで美味しいですわ!………あっ」

そこで、自転車でやってきた事を思い出す。
本心としてはこのままハイボールをおかわりしたい。
しかし、夜はサイクリングする予定だった。このまま飲み進めれば飲酒運転になってしまう。
この一杯を最後に、ノンアルをキープすれば酒も抜けて飲酒運転は回避できる。しかし、正直まだまだ沢山飲みたい。
そんな思考を巡らせていたが、決心は固まった。
「やはり、ジャスミン茶が至高ですわ」

そう、夜のサイクリングのために酒の誘惑に打ち勝ったのだ。もはや趙の三大天のような強者の気持ちで、味気ないクラブのお茶を口にしながら音に合わせてステップを踏む。
ふと、横を見たらpencil氏も体を揺らして微笑みながら酒をチビチビやっている。
そう、クラブは自由だ。どんな楽しみ方だって受け入れてくれる、そんな度量が肝なんだ。

踊ってはお茶、踊ってはお茶を繰り返し楽しんでいると、あっという間に時間が過ぎていた。

「pencilさん、ナイスアクトでしたわ」

「あざすw ちなみに俺はこれから打ち上げの方に行くんでここで失礼します」

「えぇ、本日は楽しかったですわ。またリリースの相談させてくださいまし」

「了解です!また今度!」

爽やかに別れた後、DJメジロマックイーンは駐輪場でクロスバイクを回収し、渋谷の三大ゴミカス要素である坂道を登り始める。
時刻は18時。まだ少し明るさが残ってはいるが、そろそろ暗くなる頃合いなのでオレンジの街灯が246号線を彩り始めていた。

そのまま神泉交差点を通過し、大橋交差点までの坂道を下る。ここの疾走感がたまらなく気持ち良い。ヒャッホゥ!
大橋交差点を左に曲がると、そのまま山手通りに合流する。ここからはナイトサイクリングの時間だ。

DJメジロマックイーンにとってのサイクリングの醍醐味は、【日常を程よいスピード感で見つめながら置き去りにしていく事】である。
人並びができている料理店。通り沿いに点在する雰囲気の良いカフェやバー。手を繋いで歩くカップルや遊び疲れた学生達。
あらゆる日常が愛おしく感じられて、それを連続して流し見る。それはもう、俺にとって……生の映画を観ているようなモンだよ…。

まずは中目黒に到着する。山手通りは広めの道路なので、割と自転車には優しい作りとなっている。
気楽に走っていると、あっという間に中目黒駅を通り過ぎる。

そこから大鳥神社前を通過する。寄生虫博物館があるところだが、まだ入ったことはない。昔、地獄先生ぬ〜べ〜で寄生虫がメインの回があったのを思い出す。あそこまで小学生の女の子でエロを突き通していた作品、今考えるとヤバすぎる。ヘイト企業集英社は謝罪しろ!

閑話休題。

西五反田辺りに来ると街の様子も少し変わり、ビジネス街の雰囲気を纏いはじめる。大崎まで来れば完全に様変わりする。
そこから更に走ると、品川付近に到達する。ここから少し寄り道として山手通りから外れると、北品川の商店街なんかがあるのだが、ここが昔の日本の様相を保っており、なかなかに風情がある。どこかのタイミングで飲み歩きをしてみたいと思っている場所だ。

寄り道を終え、山手通りに戻って更に真っ直ぐ進むと、潮風の香りがしてくる。気づけば天王洲アイルの駅前だ。
更に真っ直ぐ進むと、コンテナ街が広がっており完全に港だ。アクセラレーター(一方通行)に勝てば御坂を助けられるんだろ?という気持ちにさせてくる。

そこまで走れば、海にぶつかるので折り返す道を選びそのまま帰宅だ。真夏日のため汗を大量にかいたが、程よい運動のおかげで途中のコンビニで買った麦茶が最高に美味い。

自宅に到着し、シャワーを浴びる。
体を清めたら使用人(イマジナリー)が用意していた夜ご飯を食べる。
歯を磨き、就寝するためベッドへと向かう。

ドラマチックなことばかりではないのが人生かもしれないが、何でもないような時間も、確かに人に支えられている。そんな思いやりの連鎖の上に自身の生活がある。
明日も一つ一つを大事にしながら生きよう。

ふとそんな事を思い、静かに目を瞑ると、息をするだけの肉塊になった。
おやすみ世界。

Tracklist

 01 Good Morning, Bubbles Park / DJメジロマックイーン
 02 Night Cycling / DJメジロマックイーン
 03 Summer City Walk / DJメジロマックイーン
 04 Carnival Complex / DJメジロマックイーン

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